失った記憶が何であるかがわかったから満足でもしたのだろうかとアーシェリアスが考えていると、食堂に昼食をとりにきた侍女たちがこちらをチラチラと見て頬を染めている。

「やっぱりノア様よ!」

「ノア様、ごきげんよう」

「はーい、こんにちは」

 ノアが笑顔で手を振ると、女性たちはテンション高く去っていく。

「相変わらずモテモテだね」

 魔物たちから情報を引き出せるノアの活躍は目覚ましく、今や騎士団にはなくてはならない存在だ。

 元からの美貌に相俟って騎士団でも有望株とくれば、女性からの人気もうなぎのぼり。

 仲のいいアーシェリアスも、城勤めの独身女性たちからノアに恋人はいないのかと聞かれることが多い。

「あ、ヤキモチ? 今ならまだ間に合うから結婚なんてやめなよー」

「お前、いい加減にしないと今度こそアイザック様に追い出されるぞ」

「その時はアーシェを攫って出ていくからいいもん」

 痛くもかゆくもないといった様子で答えたノアだが、その後頭部にチョップが入る。

「よくない」

 呆れた眼差しでノアの背後に立つ人の姿に、アーシェリアスは顔を綻ばせた。