「アーシェ、これで全部?」

 王都ファーレンのメインストリートにて、両手に荷物を抱えたノアが笑みを浮かべて首を傾げた。

「うん。揃ったはず! ごめんね、荷物持ってもらっちゃって」

「見た目より軽いから大丈夫! それに、アーシェのためならボクいくらでも頑張れるし」

 エヘヘと笑ったノアの好意にアーシェリアスは「ありがとう」と微笑んで返す。

(前、男として意識してもらう……みたいなと言ってだけど、あれってどうとればいいのかな)
 好意を寄せてくれているのはわかる。

 けれど、それがラブなのかライクなのか、懐っこいゆえにわかりにくい。

 いつまでも勘違いせず、男として扱ってよねという意味が正解なのか。

 それともそのままの意味で、恋愛対象として見てほしいということか。

 後者の場合、ザックに想いを寄せているアーシェリアスは気持ちに応えられない。

 とりあえず、決定的な言葉をもらったわけではないので、アーシェリアスとしてはいつもと同じように振る舞うのみだ。

「にしても、ザックとエヴァンは忙しそうだよね」

「そうね。今日は騎士団に用事があるって言ってたけど……」

 朝、アーシェリアスの部屋を訪ねてきたザックの言葉を思い出しながら、人の多い広場を歩く。

「ザックは騎士団に所属してないよね?」

「多分? アーサー様が騎士団長だから何か用があるんじゃないかな」

 ジェイミーによると、捕らえられた盗賊たちも王都に移送される話しだった。

「ティコは元気かな」

「あのおっちょこちょい君?」

「そう。いい人だったし、罪を償ったらぜひ鍛治師を目指して──」

 ほしいな、と続けようとしたアーシェリアスは、広場の向こうに会いたくない人物を見つけ、ノアの腕を引くと慌てて路地へ入った。