「弁えるべきは弁える。……似ているわね」

「え?」

「あなたと共にいるのも頷けるというもの」

 女王が一体なんの話をしているのか見当がつかず、アーシェリアスは首を傾げる。

 その時ふと、女王の瞳が物憂げに曇り、膝に置いた手元に落ちた。

「……あなたは、宝石のように透き通った甘いお菓子を知っているかしら? キャンディーのような、けれど柔らかいものです」

「柔らかいキャンディー、ですか?」

 尋ねるも、女王は自嘲しゆるりと頭を振って立ち上がる。

「なんでもありません。レディアーシェリアス。料理を楽しみにしています」

「は、はい! 精一杯作らせていただきます」

 アーシェリアスも立ち上がり頭を下げると、女王は兵士を連れて庭園から去っていった。

(悪い方じゃなさそうだけど……)

 派閥による後継者争いが互いの関係を歪ませてしまったのでは。

 それにしても、最後に言っていた甘いお菓子とはなにか。

 アーシェリアスは新しく増えた考え事に、うんうんと唸って噴水の水が落ちるのを眺め続けた。