ジャガイモ効果がザックの心を守ってくれるように祈りつつ、アーシェリアスは深呼吸息した。

 何を言われるかはわからないが、昨夜ザックとエヴァンがフォローしてくれたように悪い話ではないはず。

 そう信じ、ザックと並んで開いた扉の先を見つめる。

 大広間の奥にはファーレンの紋章が施された天蓋。

 その下に、女王はいた。

 玉座に堂々と座る気品に溢れた壮年の女性が、じっとアーシェリアスを見据えている。

(ううっ、ジャガイモには到底思えないほどの大物オーラ! 負けてはダメよ私の想像力! あれはジャガイモよ!)

 必死に脳内でジャガイモへの変換を試みていると、女王の横に立つ際しようと目が合った。

 つり上がった双眸は昨日と同じく感情が読みにくい。

 変に不安にさせられる気がして、アーシェリアスは唾を飲み込んだ。

 その気配に気付いたザックが「アーシェ」と小声で呼ぶ。

「宰相はニンジンでどうだ」

 その提案に、アーシェリアスの中で張りつめかけた緊張の糸が緩んだ。

「ふふっ、いい案かも」

 零れたアーシェリアスの笑みにザックも微笑むと、ふたりは揃って一歩を踏み出した。