「宰相殿は何用でここへ?」
「陛下の仰せで人を探しに」
説明しながら宰相の視線がアーシェリアスに向けられる。
「長い黒髪と、アネモネの紫に似た色の瞳……。もしや貴殿がアーシェリアスという名のレディか?」
「は、はい。私がアーシェリアス、です」
「ふむ、アイザック殿下のお知り合いでしたか」
宰相の目が品定めするようにアーシェリアスを見る。
その視線が気に食わないザックが、遮るようにアーシェリアスの前に立った。
「アーシェに何の用だ」
「彼女に用があるのはわたくしではなく陛下です」
「陛下が?」
警戒するよう硬い表情で目を細めたザックに、宰相が先手を打つ。
「用件について詳しくは陛下が直接話されます。明朝、城までお越しください」
「ちょうどいい。実は俺たちもあなたに聞きたいことがあって王都まで戻ってきたんだ」
「わたくしにですか? はて、どんなご用件でしょうか」
首を傾げた宰相に、ザックは僅かに声のボリュームを落とした。
「灰鷹という盗賊団からある料理の本を買ったはずだ。俺たちはその本を探している」
宰相が買ったという証拠はない。
だが、情報を入手しているのだという毅然とした態度で告げたザックに、宰相は「なるほど」と頷く、
「ならばアイザック殿下も陛下の元へ」
「なぜ?」
「あの本は、陛下の命で手に入れました。ですので、本についてはわたくしではなく陛下にお尋ねください。では、失礼します」
(どうして、陛下が料理本を?)
アーシェリアスは不思議に思いながら、一礼して宿屋から去っていく宰相を見送る。
「陛下の仰せで人を探しに」
説明しながら宰相の視線がアーシェリアスに向けられる。
「長い黒髪と、アネモネの紫に似た色の瞳……。もしや貴殿がアーシェリアスという名のレディか?」
「は、はい。私がアーシェリアス、です」
「ふむ、アイザック殿下のお知り合いでしたか」
宰相の目が品定めするようにアーシェリアスを見る。
その視線が気に食わないザックが、遮るようにアーシェリアスの前に立った。
「アーシェに何の用だ」
「彼女に用があるのはわたくしではなく陛下です」
「陛下が?」
警戒するよう硬い表情で目を細めたザックに、宰相が先手を打つ。
「用件について詳しくは陛下が直接話されます。明朝、城までお越しください」
「ちょうどいい。実は俺たちもあなたに聞きたいことがあって王都まで戻ってきたんだ」
「わたくしにですか? はて、どんなご用件でしょうか」
首を傾げた宰相に、ザックは僅かに声のボリュームを落とした。
「灰鷹という盗賊団からある料理の本を買ったはずだ。俺たちはその本を探している」
宰相が買ったという証拠はない。
だが、情報を入手しているのだという毅然とした態度で告げたザックに、宰相は「なるほど」と頷く、
「ならばアイザック殿下も陛下の元へ」
「なぜ?」
「あの本は、陛下の命で手に入れました。ですので、本についてはわたくしではなく陛下にお尋ねください。では、失礼します」
(どうして、陛下が料理本を?)
アーシェリアスは不思議に思いながら、一礼して宿屋から去っていく宰相を見送る。



