破滅エンドまっしぐらの悪役令嬢に転生したので、おいしいご飯を作って暮らします ②【11/25コミカライズ完結記念番外編追加】

 夕刻、無事に役目を果たしたアーシェリアスは、バレットに宿の場所を教えてもらいノアと合流した。

 ザックとエヴァンが戻ったのはその後すぐだ。

 広い部屋に入ったザックが眉を顰める。

「なんでVIPルームなんだ」

「ひとり用の部屋は改装中だからVIPルームしか空いてませんって言われて、抱っこしてたシーゾーにどうしようかって相談したら、宿屋の主人が『その子生きてるの⁉』って興奮して。あ、大のモフモフ好きなんだって」

「いや待て、話が見えないぞ」

 なぜモフモフの話になるのかと怪訝な顔になるザック。

「最後まで聞いて。で、こんな可愛いモフモフは見たことがない。モフモフさせてくれたらVIPルームを格安で提供しますって言ってくれたわけ」

「あ、だからさっきからシーゾーの姿が見えないのね」

 ノアの説明で納得したアーシェリアスがポンと手を打った。

「うん。夕食の時間までモフモフさせる約束なの。勝手にごめんね、アーシェ」

「シーゾーが納得してるなら私はいいけど……」

「モフモフくらい朝飯前だって言ってたよ」

「おお! 頼もしいな!」

 腕を組んで大笑いしたエヴァンが、部屋を確認して回る。

「ベッドルームはふたつ。このだだっ広いリビングにはソファーもあるし、寝床の問題もない。安く泊れてラッキーだな」

「シーゾーにビスケットいっぱいプレゼントしてあげなきゃ」

 アーシェリアスが笑みを浮かべて言うと、ザックはようやく表情を和らげた。