「アイザック様、帰ってきましたね!」

「そうだな」

 王国内では堅牢無比な二重の城壁を誇る王都ファーレン。

 城壁の外の町をホロ馬車で進みながら、ノアが「うわー」と口を開けた。

「ホントでっかいよね、王都って」

「ノアは王都はいつぶりなの?」

 後ろの座席からアーシェリアスが尋ねると、ノアは立てた人差し指を顎に添える。

「五年ぶりくらいかな。親戚が王都で働いてるとかなんとかで、お母さんと会いに来たんだ」

 懐かしいなぁと零して段々と近づく王都を眺めるノア。

「その方はいまでも王都で仕事してるの?」

「多分? ボク、あんまり詳しく聞いてないから」

「もしいるなら会えるといいね」

 せっかく王都まで来たのだ。

 目的は幻の料理だが、皆それぞれ満喫できるといい。

「うん! シーゾーも、美味しいビスケットがあったらゲットしないとね」

「モフー!」

 アーシェリアスの膝の上で寛ぐシーゾーが喜んで羽をばたつかせる。

(ミアとアルバートはもう王都に着いてるのかな。破滅エンドフラグをうっかり回収しないよう気をつけないと)

 アーシェリアスは気を引き締めつつ、王都を眺めながら進む。

 やがて一行はついに城郭都市の正門に到着した。