父と兄を心から尊敬し誇りに思っていると、レオナルドが小首を傾げて黒髪を僅かに揺らす。

「旅は? もう幻の料理を見つけたのかい?」

「まだなの。でも、エスディオで手がかりを見つけて、王都に向かうことになって」

「なるほど。物資調達のためにマレーアに立ち寄った、というところかな?」

「さすがレオ兄様」

 肯定したアーシェリアスに、レオナルドはわざとらしく溜め息を吐いた。

「残念だな。俺に会いたくて戻ってきたのかと思ったのに」 

 そんな冗談を言いウインクした推しの魅力に、アーシェリアスは危うく卒倒しかける。

(ひいぃっ! 尊さがK点越えもの!)

 ザックに恋をしているが推しは推し。

『それはそれ』、『これはこれ』の精神で推しからの萌えを傍受するアーシェリアスだったが、ハッと我に返る。

(レオの尊さに悶えてる場合じゃなかった!)

 屋敷へ戻ったのは家族に会いたいからではあるが、もうひとつ目的があるのだ。

「兄様、実は仲間たちを一晩うちに泊めてほしいの。いいかしら?」

「仲間? ザックとシーゾーのことかい?」

「そのふたりと、もうふたり、旅の中で増えたの」

 アーシェリアスは、ザックと共に現在買い出し中のノアとエヴァンのことを簡単に兄に説明した。

 エヴァンについては、ザックが王子であると知った話も踏まえて伝えると、レオナルドは「そうか」と微笑んだ。

「実は、父様が旅について承諾したのはアイザック様が身分を明かしたからなんだ」

「やっぱりそうだったのね」

 アルバートとの婚約破棄についても、驚くほどスムーズに済んだことを打ち明けられ、アーシェリアスはスッキリする。

「アーシェと共に苦楽を共にした人たちなら大歓迎だ。父様にも伝えておくよ」

「ありがとう、レオ兄様!」

 笑顔を見せたアーシェリアスに、レオナルドもまた優しい笑みを返したのだった。