今から訂正はできないものかと焦るも、いや待てよと先ほどの光景を思い出す。

 ミアとアルバートはザックから注意を受けたばかりだ。

 そんな状況でミアが仕掛けてくるだろうか。

 ちらりとミアの様子を伺うと、彼女は申し訳なさそうに俯いたままだ。

(これなら大丈夫かも?)

 そう考え、アーシェリアスが安心しかけた直後。

「奇遇だな。僕たちも旅の終わりのゴールに王都へ行くんだ」

「ええっ⁉」

 アーシェリアスは再びパニックになりかけた。

「なぜ驚く?」

「い、いえ、本当に奇遇だなぁと思って」

 敵はミアやアルバートだけじゃない。

 一番やっかいなのは、ふたりのルートで生まれるはずだった破滅フラグという運命だ。

(ミアとアルバートの旅の終わりと共に、私の人生も終わったら困る……!)

 冷や冷やしながらも、挨拶を交わしてふたりが背を向けると、静観していたノアが「ボク、ミアって人ちょっと苦手」と誰にもなしに零した。

 ザックがアーシェリアスの隣に立って、アルバートたちの背中を見送りながら腕を組む。

「……アーシェ、例の運命は手ごわそうだな」

「ええ……運命の修正力って強すぎよね……」

 はぁ、と溜め息を吐いたアーシェリアスに、ザックは強い瞳を向けた。

「だとしても、俺が捻じ曲げてやる。俺は旅を決めた時に誓った。アーシェを全力で守ってやるって」

 立ち向かう相手が運命という大きなものだとしても。

 決意を秘めた瞳を見つめ返し、アーシェリアスは込み上げる気持ちのままに微笑んだ。

「ありがとう、ザック。今日から毎日おやき焼かないとね」

「必要ない。俺の意思で守る」

 冗談めかしたアーシェリアスに、愛する者を見つめる瞳で答えたザック。

 そこにお腹を空かせたシーゾーが飛び込んできて、アーシェリアスとザックは微笑み合うと支度に戻った。