「手違いで危険に晒してしまい、申し訳ありませんでした」

 けれど、ザックは何も答えない。

 その視線はミアへと向けられていて、やがて口が開いた。

「今回、たまたま俺たちが一緒に馬車に乗り込み、シーゾーが追ってくれていたから助かった。だが、ひとつでも違ったらアーシェは今ここにはいなかったかもしれない」

 ザックの声は珍しく固く、ミアを見るその目は厳しい。

「そうなっていたら、俺はアンタを死ぬまで許せなかった」

 こんなにも怒りを滲ませたザックの声を聞くのは皆初めてだ。

(私のために、本気で怒ってくれてる……)

 感じるザックの想いに、アーシェリアスはミアに申し訳なく思いながらも密かに喜んだ。

 さすがにミアの顔も青ざめる。

「もっ、申し訳ありませんでした!」

「アルバート卿も、次はないと思ってくれ」

「はい。しかと胸に刻みます」

 重くなった雰囲気を払うように、エヴァンが「うむ」と頷いてアルバートの肩を叩いた。

「まあ、マンゴーでも食べて元気を出せ!」

「それで元気が出るのはお前だけだろ。ところで、エスディオを出るのか?」

 尋ねたアルバートに、エヴァンが即座に答える。

「ああ、俺たちはこれから王都へ行く」

 ぽろっと行き先を告げられてしまい、アーシェリアスは心中で叫ぶ。

(ひいぃっ⁉ ミアの前でなんてことを! また追われたらどうするつもりぃぃ⁉)

 自分ではなく仲間が破滅フラグを拾うなんてありなのか。