ザックが嫌がるなら別の手段がないか皆と相談しよう。

 しかし、それもここを脱出できないと叶わぬこと。

 腹を満たしたふたりが思案するアーシェリアスを見る。

「何をするにも、まずはここを出ないとだな」

「だね~。ここの鍵、どうにかゲットできないかな……」

 ノアが人差し指を顎にあてて「うーん」と唸った時だ。

 洞内に反響する男たちの声が俄かに騒がしくなってきた。

 見張りの男も異変を感じ取り、「なんだぁ?」と声を零したその直後。


「お……! アイ……様は……だぁぁぁぁ!」


 かなり聞き覚えのある絶叫と、金属がかちあう高い音が鳴り、アーシェリアスたちは顔を見合わせた。

「もしかしてもしかするとエヴァン?」

 声を潜め、しかし瞳は輝かんばかりに明るくしたノア。

 金属音と呻き声、そして「うおおおっ!」「きええぇぇ!」と無駄に吠える馴染みのある声が段々と近づいてくる。

 見張りの男が警戒を最大限に高め、背に装着している斧の柄を掴んだ。

 その手は震えていて、戦い慣れていないことを悟ったザックがアーシェリアスとノアを背に庇うように立って口を開いた。

「エヴァン! ここだ!」

 男の声が牢の中からいきなり上がり、見張りの肩が跳ねる。

「お、男……?」

 しかし、振り返っても牢の中にいるのは女性。