不意に、ドアがガチャっと開いたので振り向くと、七菜が来ていた。
「かんにいにー、プールいきたーい!」
「七菜……」
「みてみてー、なな、みずぎかってもらったんだよ!」
そう言って、七菜は自分が持ってきた子供用の水着を見せた。
ひらひらとさせたデザインで、可愛らしい向日葵柄の水着だった。
「ちょっと、七菜。寛太くん、お勉強中なんだから集中させなきゃダメだって言ったでしょう」
眉を八の字にして入ってきたのは、兄貴の奥さん。七菜の母親で、俺の義姉ということ。
「えー、かんにいにもつれていきたーい」
まあ、こんなに暑いんだからそりゃあプールに行きたがるよな。
その気持ちは分かるけれど、俺の部屋で足をドタドタとその場で弾ませるのは勘弁だ。
「いいですよ、お義姉さん。プールくらい」
「あら、本当に? お勉強の方は、大丈夫?」
「はい、割とひと段落ついてるんで」
こんなことを言っているけれど、思わず紫杏や温森のことを考えて、机に向かっていても意味がないと思ったからなんだけどさ。



