お客さん達も、戸田くんが出て行った方向だけを見つめている。
てっきり、さっきからわたしをずっと見ているボーイッシュな女の子も戸田くんについていくのかと思ったけれど、どうやらその気はないみたい。
「失礼いたしました」
と、大沼くんは他のお客さん達に謝る。
「あ……あの、温森さん」
遠慮がちに、大沼くんはわたしに話しかける。思わずわたしは、涙で濡れた頬を大沼くんに見せた。
「シナモンデニッシュ、美味しいよ」
「よ、よかっ、た……」
「俺もちゃんと試食した。しかも、誰の具合も悪くなってないから、温森が作ったスイーツに異物が入ってない証拠なんて充分にあるよ」
東條くんも、カウンターの方へ戻りながらそう言ってくれた。
気がつけば、紫杏ちゃんもわたしの方に駆け寄ってきてくれていた。
「あんなこと言われたら、そりゃあつらいよね。頑張ったね」
そう言って、真っ白のハンカチでわたしの涙を拭いてくれる紫杏ちゃん。
このハンカチ、気持ちいい……。それに、いい匂いまでする。
「ありがとう……」
わたしは、3人に対して同時にお礼を言った。



