火種は腐女子・吾川でも、炎上させたのはおまえだ、木村。
 おれはもうため息も出ない。
「もういい。めんどくせぇから会わす。代表で木村。あとでちょっとついて来い」


 おれは代表で木村、とたしかに言った。
 それが団体様御一行の旗振りガイド。
 なんで足立に吾川まで?
 お初の人間3人に囲まれたら、虎のやつ、おもらし確定じゃねぇの?
「ねえ、弟ってまじ? 加藤の弟がうちにいるなんて聞いてないよ」
 火種・吾川が漫研の部長だということを、ついさっき知ったばかりのおれは、彼女の握りしめているスマホが恐ろしい。
「まだ中坊だからな。白シャツ黒パンならうちの生徒に見えるし、制服着せてきたんだよ」
「え! 中学生? どうりで。も、すんごくかわいいんだよぉ」
 吾川に話を振られた足立が「や…、でも――」と、おれをちろりと見た。
「なんで町田くんも? 浩ちゃ…木村くんが、朝は町田くんも泣きそうだったって」
 はああ?
 木村のやつ、なにを話してくれちゃってんだ?
 男のくせにロの軽い。
 にらむおれから木村が不機嫌丸出しで視線をそらす。
 それでわかった。
 代表の座から逃げた木村→足立。
 地獄耳=吾川。