町田みたいに見えちゃうならともかく。
「…………」
 だから違ーう。
 どうでもいいんだって、町田のことなんか。
「おふくろは? 知ってんの?」
「えと…、図書館、行きなさいって……」
 言うよな、あのひとは。
 息子の性格も知らないで。
「んもう。兄ちゃん、おれのことはいいから。ちゃんと勉強がんばってね。お母さん、すっごく喜んでたよ、兄ちゃんがやっとやる気になってくれたって」
「…………」
 おまえはいつだって、がんばってきたのにな。
 手がかからないとか言われたあげく、おれの朝飯の世話まで押しつけられて。
 さすがに今回ばかりは、からかって遊んでる場合じゃないか。

 洗面所でたらたら歯をみがきながら、ふと浮かんだ八つ当たり代替案。
「虎、そのあたり、おれが今晩おふくろと交渉してやるから。今日は制服着て、勉強道具持って、おれといっしょにきな」



「本当にいいの? 怒られない?」
 校門まで来て、まだビビるか、虎よ。
「白シャツと黒ズボンと、おれのスクールバッグ。3種の神器でおまえはもう透明人間だ。心配すんな」
「……ははは……」
 うつむいて小さな笑い声をこぼす虎の手がおれのベルトに伸びてきた。
 うーん。
 人見知りっていうのは治せない病なのかねぇ。
 おれの図太さの半分くらい、分けられないもんかな。