「あー、かわいい。あたしも妹いたらなぁ」
 五十嵐が虎の両手に頬ずりして、もだえている。
「頼んだらいいじゃない。妹になってって。ねぇ、とんちゃん」
「えっ。ぇぇぇぇぇ?」
 うろたえる虎に五十嵐がうなづく。
「よし、とんちゃん。今日から沙織が、お姉ちゃんね」
「――――ぅ、うん」
 五十嵐の勢いに押されてうなずく虎に、町田がほほえむ。
 ありがとな、五十嵐。
 町田にきれいなものを見せてやってくれて。
 それと、王女さん。
 町田を楽にしてやってくれて、ありがとう。
 最後にもうひとり。
 おれの弟を――、虎を守ってやってください。
 あと、おれにもちょっとだけ勇気ってやつをいただければ幸いです。

「うわー。ピンク……、きれい」
 虎が五十嵐に預けた手指をうっとりと見ている。
 しゃがんでおれものぞきこむと、頬を染めてはにかんだ。
「どぉ兄ちゃん……」
「うん。スゲーいいかんじ。あのクソ野郎に見せつけるだけじゃもったいない気がしてきたわ。ずっとそのままで…いてほしいくらいだ」
「…………」
 虎は静かに泣いた。
 ぽろりぽろりと涙をこぼして。