王女ちゃんの執事3『き・eye』男の娘、はじめます。

「うわー。今の聞いた? 兄ちゃんだって」
 吾川よぉ。
 おまえの興奮ポイントがおれにはわからねぇよ。
 木村も眉をひそめたから、おれの感性は多数派だぞ。
「――ぅす」「あ。木村先輩」
「ひゃあああ!」
 のっそり片手を上げた木村にぺこりと礼儀正しく頭を下げた町田。
 奇声を発したのは吾川だ。
 男3人の目が集中したのはもちろん吾川に。
 とんだヒロインだな、おい。
「やだ。マジで木村、彼と知り合いなんだ。なに? あんた達って公認トライアングル?」
 あーがーわぁぁぁ。
「も、わかったろ、あいつは弟! ばかな妄想してないで、とっとと帰れ」
 そしてばらまけ、号外を。
 おまえの情報拡散能力だけは、この際、有益だ。
「えー。写真! 写真撮らせてよぉ。こんな美形カップルおいしすぎるっ」
 吾川が虎と町田にレンズを向けると、ふたりがしゃがみこんだ。
 正確には
「いやっ」と叫んだ虎は顔の前に腕をクロスしてしゃがみ。
「うっ」と、うめいた町田はどすんと床に尻をついたってやつだろうが。
 虎のへたれぶりにはあきれたものの、町田の「うっ」には思い当たることがありありのおれは、一瞬頭に浮かんだ思いを振り切ってふたりのもとに駆け寄った。