王女ちゃんの執事3『き・eye』男の娘、はじめます。

「ねえ。なんで、あだっちゃんが、そんなにいろいろ知ってるの?」吾川の好奇心フィールドが全開。
「…ってか、木村もあの子――町田くん? 知ってるの? なんで?」
「…………」「…………」
 当然しゃべりたくないわな、ふたりとも。
「うるせぇぞ吾川。弟だって証明してやるっつってんだろが」
「そうだけどさ。なんで泣きそうな弟くんを、あの『加藤さん、きれいです』の美少年くんとご対面させちゃってたのか。それはそれで興味あるじゃーん」
「…………」「…………」「…………」
 おれはともかく、木村と足立が黙る理由は知りたくもないが。
 吾川が粘着してきたのは、この際ラッキーな気がしてきたぜ。
 この尽きない好奇心。
 ここでこいつを黙らせてしまえば、くだらんウワサは鎮火して、この先のおれの受験生ライフも生徒1に戻って平穏になるだろう。
「うちのエアコン壊れて、かわいそうだから連れてきたんだよ。受験生なんでな」
 けちな母親が電気代をしぶるからだとは、さすがに言わない。
「だからさ、それでなんで音楽室? 町田くんてブラバン部員でも軽音部員でもないじゃない。どっちも取材させてもらったことあるけど、彼、いなかったわよ」
「…………」
 どこまで糸を伸ばしてるんだ、このクモ女は。