湿気た愛

床が硬い。
寒い。


「起きたのか?」


どうやら横たわっているらしいわたしの頭上から、ちょうど少年と大人の間のような、心地よい音色の声が降ってきた。


まだ状況が把握しきれずパニックでパッと目を開けると、そこにはとても美しい男の子がいた。

きっとわたしと同い年くらい。
けれど少し痩せているから、子供らしい柔らかさはない。


子供らしくないという点で、わたしたちは少し似ているのかもしれない、なんて呑気に思っていたのはつかの間。


現実を思い出すのにかかるのに数秒を要した。


「わ、わたし、誘拐された」


まだ私を見つめ続ける彼に、やっと出た声は震えていた。