湿気た愛


私は意を決した。
カイの過去を全て受け止める。

私がいくら1人でユキの事を考えても、この嫉妬はいつまでも消えない。

カイの口から、直接何があったのか聞いて、それから解決策を考えるしかない。


次に目を覚ました時、扉のそばに置かれたおにぎりはすっかり冷たい。


おにぎりを頬張りながら、何も気にしていない風に装って尋ねることにした。


「ねぇ、カイ。
ユキってだれなの?」

しかし、カイは私の望む答えをくれない。

「ユキ?そんな人は知らない」

知ったかぶっているのだろうか。
カイに、そんな器用な大人の駆け引きみたいなことは不釣り合いだ。

もしくは、本当に知らないのか。

恋心は後者を望む。

けれどそれでは、何も解決しないのだ。


「じゃ、じゃあさ、カイが好きだった人の名前って誰なの?」

「好きだった人?」

「カイの初体験の人の名前」

「あぁ、あいつは、アイナ」

もしかしたら私の聞き間違えかと思ったのだけれど、さすがにアイナをユキと聞き間違えるほど耳は壊れていない。

「何人もここに来た人の中にもユキは一人もいない?」

「全員の名前を覚えている訳では無いが、恐らく」


ますます謎は深まるばかり。

しかし、カイがまだ前の人を想い続けている訳では無いという事実が欲しかっただけの私は、もう満足してしまったのだった。

私の決意とはそんなもので、ユキの真相を知るのはまだまだ先になりそうだ。