ずっと寝たきりのような状態が続いていたある日。

熱にうなされていたせいだ。

まちがいない、きっと聞き間違えた。

だって、今のカイには私しかいないはずなのに。

それなのにカイは、

「ユ、キ…」

と寝言を言った。

この蒸し暑い部屋に似合わない雪のイントネーションじゃない。
完全に、女性の名前。


カイにオンナを教えた例の大学生の名は、ユキと言うのかもしれない。


さらに具合が悪くなるのを感じた。