湿気た愛

「ねぇカイ」

カイは私がここに来てからまた新しいダンボールをお母さんに頼み受け取っていた。

本を読むスピードが尋常でない。

そしてまた私が話しかけると本を閉じる。

私はいつもより慎重に声を小さくするように意識した。


「今までここに来た人の中に、女の子はいる?」


「あぁ。幼稚園児から大学生まで、男女共に来たかな」

どうやら、私が想像していたよりもかなり多くの人が来ているようだ。


「その中で、その…付き合ったりっていうか、恋人っぽいことした人っているの?」

自分の顔が火照るのを感じた。


「いるよ」


やはり、私が想像して、嫌だと思っていたことが現実であった。


「お母さん、何か言わなかったの?」

「あぁ。
逃げようとしない限り何も」

「でっでも、この前私が抱きついた時に嫌味言ったのはどうして?」

「嫌味?あれはいつも通りだよ」


カイにとっての普通と、私にとっての普通が違うのだと改めて思い知らされた。