湿気た愛

次の日の食事が届いた。
たまにはサラダの時もあるんだなぁ。
今日の服装はどこかへお出かけに行く日なのかななんて考えていた時。

「あんた、カイの事を好きになったのかい」

カイのお母さんはそう私に言った。
目が鋭い。
睨むという程では無いのに、突き刺すように見られる。

「こいつが何を言ったか分からないが、騙されるなよ。
こいつは忌々しい子供だからね」

嫌味ったらしくカイを見て、また鍵を閉めたあと階段を上る音が聞こえた。



「…ごめんね、私が昨日抱きついたからだよね」


「平気だ。初めての事じゃないから」


それは母親に罵られたことがあるということか。
それとも、他の人に抱きしめられたことがあるということか。

私はどうも、後者のように思えてならなかった。

聞きたくない。

カイは今、私を必要としているんだから。

自分にもこんなにどす黒い嫉妬心があったことに驚きながら、ここへ来て初めてのおにぎり以外の食事をとった。


もう安易に、カイに近づきすぎない方がいいのかもしれない。

カイがあんなふうに罵られるのはあまりにも見てられない。

本人は気にしてないみたいだけど。

それにしても、忌々しい子供だからね、って一体どう言った意味なのだろうか。