湿気た愛

「そいつが消える前日、飯を運んできた隙に逃げようとしたんだ。
そしたら、次の日俺の目が覚めた時にはいなくなってた」


平然と語るカイに、ここに来て初めて不信感を抱いた。

どうしてそんなに他人事に話すのだろう。

そしてここへ来てようやく、初めてカイのお母さんとコンタクトをとった時に言われた、逃げようとしたらどうなるか、という言葉を思い出させられた。

カイはどうして今になって私に話したのだろう。


「何度いなくなっても、やっぱ寂しいだろ」

“何度”


「何度も、人が来ては消えてるの?
今私にその話をしたのは消えて欲しくないって思ったから?」


「あぁ」


その相槌には、どんな気持ちが含まれているか。

だから、私が来た時、カイは何も混乱してなかったんだ。

また来たか、その程度だったのかもしれない。

ここへは、何人もの人が来ては消えていくらしい。

私もいづれはその道を辿るのだろうか。

その先は、死なのか。