湿気た愛

「ねぇ、カイ」

「なんだ?」

それでもカイは、私が話しかけるとすぐに本を閉じ、私を見つめてくれる。

近距離で話すのも初めはドキドキしていたが、今では慣れた。

「今何月か知ってる?」

「いや」

「1月。
冬休みだったんだ。
もうそろそろ学校始まったかな。
私がいなくて、大問題になってるかも」

「そうだな」

カイは学校に行きたいのか分からないが、少し悲しそうな顔をしているのを見て、無神経なことを言ったかとひやひやした。

「きっと、見つからない」

けれど、私に怒ってるのではなかった。

「俺も小学校の入学式には行ったんだ。
何日か通いもした。
けど、ある日突然行方不明になったんだ。
世間がどれだけ騒いだか知らないが、俺が実家の地下に閉じ込められているとは誰も思わなかった_ってことだよな。
俺はハスナが言うには中学生になってもここにいるんだから」


「ずっと1人だったの?」


「いや」


私は思はずフリーズした。
何の根拠もないが、そうだ、と言われると思っていた。

自分を、カイの唯一の人であると信じていた。

私の唯一の人が、カイであるように。