「カイは、私が誘拐された目的を知ってる?
身代金?」

「…わからない」

私の家は、母親の再婚相手の家がどこかの社長らしく、裕福な方だった。
身代金目的、が1番現実味がある。

しかし、カイは検討もつかないらしい。


「私、殺される?」

「わからない」


自分の家族が人殺しをすることすらも、否定できないのはとても辛いことだ。


「カイに、お母さんとお姉ちゃん以外に、誰か家族はいるの?」

「いない。
父さんは元々いない」

「じゃあ私を誘拐したのはその2人?」

「そうだろう」

「カイは、何歳なの?」

「わからない」


知れば知るほど、闇が深い家族が浮き彫りになっていく。


「きっと今は深夜だ。
寝れるなら眠った方がいい」

頭を悩ませる私を見て具合が悪いとでも思ったのか、私が寝かされていた布団を指さす。

特別眠い訳では無い。

「寝ないよ。
それに、カイが眠る場所がないじゃん」

「俺はそこの布でいい」


この部屋で1番目に着く布の山。

「あれってなんなの?」

「アイツらが着てた服とかだろ」

アイツらってのはお姉さんとお母さんだろう。

「寒いと文句言ったらこれを置かれた」


布団も薄っぺらいものだし、扱いが酷い。


「どうしても寒い時はお風呂にお湯を貯めて入るといい。あそこにはカメラもついてない」


「カイって、ずっとここにいるの?」


何か不安になって、さっき黙ってた分が爆発したかのように質問がぽんぽん出てくる。


「小学校、くらいから」

随分とアバウトで、年齢も分からないということは学校にもいっていなかったのかもしれないと思った。