「だって、この布団を用意してくれたのも、あなたでしょう?」 「あぁ」 これといった理由があった訳では無いが、そもそも犯人だなんて考えは浮かんでこなかった。 言われてみれば、あのお姉さんの仲間だと思ってもおかしくない。 「俺は、誘拐されたんじゃない」 この部屋はやはり、寒い。 どうやら、窓もない。 頼りない、薄暗い蛍光灯が起き上がった私の影を映し出す。 当たり前にカバンはどこかへやられていて、お財布も携帯もない。 そんな息の詰まりそうな空間で、彼はぼそっと呟いた。