湿気た愛

私は何となくわかっていた。

固いと思っていた床にも辛うじて布団が敷かれ、体の上にもタオルケットがかかっていた。

それをわたしに施してくれたのは、きっと彼であると。


「そう、みたいだな」


呟きながら私から目をそらす彼はとても弱々しかった。
まるで、全てを諦めているかのような、そんな顔をしていた。


やはり寒いこの部屋にはもちろん暖房器具なんかなく、服なのか布なのか分からない山や、ダンボール、そして私が寝ているこの寝具以外に何もものがない。


「あなたは?あなたも誘拐されたの?」

「君は、僕を犯人側の人だとは思わないのか?」


彼の顔は困惑していた。