* * *
「藍〜、数学分からん〜」
1時間目が終わり、10分休憩が始まる。
泣きそうな表情で私の方に近寄ってくる詩乃。さっきは数学で、今回は応用問題ばかりだったし、こうなるのも分かるけど。
「っ、もー、んーっと、どれ?どれがわかんないの」
「ぜーんーぶ!」
満面の笑みで私の机の上に顎を乗っけている詩乃。くぅ……可愛いな……。
理央が鼻の下伸ばしてるの気づいて?誰か。
「理央、顔気持ち悪い」
「な、なんだとう!」
なんだどう!、じゃないよ。誰がどう見ても、気持ち悪いわ。
「藍〜、理央はかっこいいよ〜!」
知らんわ!!そんなことを聞きたいんじゃない!
「うん、はいはい。どこから教えればいい?」
「ここー!」
少しづつ教えていくと、詩乃の顔は、どんどん明るくなっていく。……分かってるんだね、分かりやすい。
詩乃も理央も、百面相みたいな、分かりやすいんだよね……。
キーンコーンカーンコーン。
「あ、休憩終わったよ、はい帰ろう」
「藍のケチ」
「……藍さんは優しいよ」
急に、ぼそ、と呟いたのは、隣の席に座っていて、理央と話していた逢瀬くん。
逢瀬くんって、結構イケメンだよね。茶髪で、鼻もスラッとしていて、背も高い。
爽やか系かな?
「お世辞ありがと。はい、詩乃席に戻って」
「えー!」
「可愛い顔してもだーめ。家で2人まとめて教えてあげるから」
理央の顔も詩乃と同じようにパァァと明るくなる。うん、やっぱりわかりやすい。
「お世辞じゃないでふ……!」
……はい?
