「宮下さん、そんなに怖がらないで。
 まず、おめでとうございます。」

恐らく、緊張の余り顔が引きつっていたのだろう。
それと声も若干震えててしまった。

「ありがとう…ございます…。」



木村さんはここの図書館の一番偉い方。
50代半ばで知らない本なんて無いだろうと思うど詳しく、乱丁や修繕作業など細かいところを私のようなぺーぺーにも嫌な顔せずに教えてくれたのは木村さんだ。


 「実は石川さんにもやんわり言われました。
 宮下さんは重い物を運んだりする仕事はしばらく避けた方がいいとか何とかって。 
 最初は何の事か分からなかったのですがね。
 思い出したことがありまして、ぴんときました。
 私の妻も悪阻が酷く入院してましたのをね。

 確かにせっかく仕事を覚えて楽しそうに働いている宮下さんが辞めてしまうのは残念だけど、命とは何にも代えられないですから。

 今日でさようならは流石に厳しいので次の締め日まではどうかな?
 体調によっては日数減らしても構いません。」 



そんな。素敵な提案を頂けるなんて思いもしなかった。。。
ここで泣いてしまったら木村さんに心配かけてしまうし、午後からも業務があるのでぐっと堪える。