妊娠が確定したからといって、安心を与えたくないので診察室でのドクターの話を持ち出す。

「椿、先生の話ちゃんと聞いてたよな?
 出産するまでの道のりがいかに大変なのか。
 無事に出産する事がいかに凄いことなのか。 
 妊娠は病気じゃないが、健康な今までの身体と同じ感覚じゃだめだぞ。」

「…はい。」

この"はい"は何となくの返事だな。
普段通りの生活に少しだけ気を付ければ良いとか思ってないよな?


「僕からの提案の一つ目だけど、椿のパートの事。
 可能なら辞めて欲しい。」

「……。はい。」

この"はい"は理解してる返事だな。

「子どもが成長して、椿の自分の時間に余裕がでたら働いたらどうだ?
 その時にちゃんと相談してくれたなら、もちろん、いいよと言うよ。」


だいぶ前に決めたこと。
図書館の職員の方には申し訳ないが辞めてもらおう。
椿には話していないが、椿の両親に結婚したい事を直談判した時にお義母さんが子どもが出来にくく、何度か流産をして椿をやっと授かったと教えてもらった。
だから、遺伝的なものがあったら椿もそうかも知れないと。そうだとしたら僕にも椿にも辛い思いをさせる事にからと結婚は断られたが全く問題ないと伝えた。
椿のご両親からしたら妊娠してましてや、重労働なんてご法度だ。


まずは第一関門ってところだな。