「これ、芦屋さんが着るんですか?」
「ブッ」
笑い声を上げたのは何かの準備をしていた越水さんだ。
ただ、なぜ笑われたのか。
芦屋さんに視線を向けると、芦屋さんも笑いながら言った。
「確かに俺の女装もなかなかだとは思うけどさ。菜那。さすがに俺が着るって、それはないよ」
「じゃあ、このドレスは?」
聞くと芦屋さんはドレスにそっと触れて言った。
「菜那がドレスに憧れるって言っていたから。菜那をモデルに起用してもらったんだ」
芦屋さんの言葉にハッとした。
それから越水さんの方を見ればコクっと頷かれたので、車内で越水さんが言っていた『如月さんの望みを叶えてあげたい』の意味に合点がいった。
でもこれは最後に相応しくない。
越水さんに首を横に振って見せるも、柔らかい笑顔が返ってきた。
「大丈夫よ。顔はベールに隠れて写らないから」
「そういう問題じゃ……」
ない、と言おうとしたのに、越水さんはいきなり私の手を引き、試着室の方に足を進めた。
「ちょっと、越水さん、私、本当に無理ですっ」
そう訴えても聞く耳を持ってくれない。
速歩きの越水さんに引っ張られながらさらに声を掛ける。


