「今日は撮影かなにかなんですか?」
「そうよ。如月さんと一緒のね」
越水さんはパチッとウインクした。
でも私は状況が理解出来ていない。
「どういうことですか?芦屋さんおひとりの撮影ではないんですか?」
「相手のモデルの子が具合悪くなっちゃって。代わりを探していたんだけど、芦屋が『菜那がいい』って聞かなくて」
そんな話聞いていない。
だって今日、私は傘を返してもらって、交際の返事をするだけのつもりだったのだから。
「私、モデルなんて出来ません。それに芦屋さんとはもう会うつもりがないんです。それを伝えようと思って来ただけなのに」
越水さんには恋人にならないと話していた手前、言えば分かると思った。
案の定、越水さんは理解を示してくれた。


