「気をつけて行ってくるんだよ」


金曜日の放課後、理絵と佳苗に送り出されて、越水さんの車が停まっている場所を目指す。

足はなんとか動いているけれど、体は小刻みに震えているだなんて、今からこんなに緊張して私はちゃんと芦屋さんと話せるのだろうか。


「すーー…はぁ~……」


深呼吸を繰り返しながら、歩を進めていくと、白い車が近づいて来た。

どうやら私の姿を見つけて越水さんが車を動かしてくれたようだ。


「こんにちは」


ウインドーが開き、運転席から越水さんが顔を出した。


「こ、こんにちは」


なんとなく、芦屋さんもいる気がして後部座席の方に視線を送る。

でもそこには誰もいなくて少しホッとしていると、越水さんが「乗って」と言ったので慌てて助手席側に回る。


「失礼します」

「シートベルト締めてね。すぐに出発するから」


越水さんに言われるがまま、カチッとシートベルトをはめるとすぐに車は発進した。


「あの」


少し進んだところで越水さんに声を掛けると横目でこっちを向いてくれたので話を続ける。