七夕の伝説


どうするのだろう。

仕事に打ち込むのだろうか。

でも体は酷使して欲しくない。


「同情や惰性で付き合ったりしちゃダメよ」


まるで私の思考を読むかのような佳苗の言葉にハッとして、いつの間にか俯いていた顔を上げる。


「どうしてそう思ったの?」

「菜那はいい子だから傷つけることを躊躇うかな、って」


佳苗の言う通りだ。

一昨日から私は自身も、芦屋さんも傷つかない方法を探している。

そんな答え、ひとつしかないのに。

ただ、後悔するかもしれない、という代償を伴う答えだからこそ踏ん切りがつかなくて、気持ちが決まらない。


「今すぐ、答えは出さないといけないの?」


理絵に聞かれて、首を傾げる。


「そうは言われていないけど。でも答えを引き延ばしても期待を持たせるだけだし、断るなら早い方が良いかと思って」


「それって、もう断る前提で話が進んでいるじゃない」


苦笑いの理絵に指摘されて「そうだね」と私も苦笑いで答える。


「家族はやっぱり大事だから。恋愛を犠牲にしてでも長生きしたいの。その想いを超えられない限りは、断らないといけないのかな、って」

「たしかに不安を抱えたまま付き合っても心からは楽しめないもんね」


佳苗の言葉に頷いて見せる。

それから理絵の方を向くと、難しい顔をして何かを考えるように腕組をしていた。


「理絵、どうかした?」


佳苗が聞くと、理絵は真剣な顔で私に言った。


「すごく嫌なこと言うようだけど、もし願掛けが叶わなかったらどうするの?」

「再発、ってこと?」


合いの手を入れても理絵は微動だにしない。

首を傾げると「そんなこと絶対に起きて欲しくない。起きないように私も祈っているから」と強い口調で理絵は言い、視線を下げた。

自分のこととは言え、安易に「再発」などと口にしたことが申し訳なくて、謝る。