向かいの席に座る理絵に聞かれて、先週末に芦屋さんと出かけたこと、芦屋さんが私に好意を寄せてくれていること、私はそれに応えることが難しいことを端的に話した。
「そっか」
端折って話しているから分かりにくかったとは思うけれど、理絵は納得してくれたようだ。
ただ、少し不思議に思う。
「芦屋さんが私を好き、って驚かないの?前みたいに『騙されているんだよ』って言わないの?」
聞けば理絵は小さく笑い、首を横に振った。
「学校にまで連絡してでも菜那に会いたいって知った時点で好意は感じていたし、菜那が寝不足になるくらい悩んでいるんだから本気で想いをぶつけられているんだろうなって普通思うでしょ」
私を信じてくれる理絵の言葉が嬉しくて、胸が温かくなった。
と同時にふと芦屋さんにはふたりのような存在が側にいるのかな、と疑問に思った。
心を許しあい、信頼関係を築き、傷ついた時には支えてくれる友達が芦屋さんにはいないからこそ、私に友達になって欲しいって言ったのではなかったか。
だとしたら、私が芦屋さんを傷つけてしまった時、芦屋さんは今、私がしているように友達に話して、気を楽にする方法がない。


