「なぁ、アイツ、なんで女装なんてしてんの?」 芦屋さんの背中を一緒に見送っていた昴の言葉にギョッとする。 「どうして男性だって分かったの?」 芦屋さんは芸能人なだけあって演技は完璧。 歩き方や振る舞いを見ても男性であることには気付かないくらいなのに。 「あれ、完全に男の目だろ」 「見た目は完全に女の子に見えるけど」 「ちげーよ」 気だるそうに言う昴を見上げると、昴は私を見下ろし、静かな淡々とした口調で言った。 「あいつ、菜那のこと好きだぞ」 「え?あ…ハハ。そんなことないよー」