観光客の合間を縫って駅へと向かう。
「すごい人だかりだな」
空いている平日だったら歩いて15分の距離を倍の30分かけてきた。
電車から続々と降りて来る観光客を見送りながら、空いたところで改札機を通る。
「はい」
また手が差し出されたのでそれを取ると、芦屋さんは電車が来るまで話しの続きをしてくれた。
「あの日、菜那と別れてすぐ、両親に電話したんだ。いつ親はいなくなるか分からないんだ、って、菜那の話聞いて気付いてさ。『時は命なり』なんて言葉作っておきながら、大事な家族の、親の命の時間を考えてなかった。命の大切さは身を持って感じていたはずなのに、どうして親はいつまでも元気だと思っていたんだろうな。必要なのは親がかき集めてくれた金を稼ぐことじゃない。元気な姿を見せてあげることだって、菜那が気付かせてくれた」
芦屋さんはその後、越水さんと事務所と相談して休みも作ってもらい、実家に帰ったと言う。
ご両親は、芦屋さんの活躍、元気な姿をメディアを通して目にしていたに違いないけれど、実物に触れて、直接会えたら安心もひとしおだっただろう。
それは芦屋さんも同じで、実家が居心地良すぎて仕事したくなくなったらしい。
「辞めるんですか?」
思い切って聞くと、芦屋さんは苦笑いを浮かべた。


