口が開いたのは参拝を終えて、駅へと向かっている最中だった。
「菜那は今日も『生き死にの順』を願ったの?」
「はい」
頷きながら答えると、芦屋さんはフッと小さく笑った。
「ブレないよな。お父さんを看取る気持ちが最優先で、そのために幸せは他人と共有する恋愛ではなく、自分の力で見つけようとしているんだから。でもさ」
芦屋さんは横断歩道で立ち止まり、参拝後から繋いでいた手に力を込めた。
「もっと欲張っていいんじゃない?」
「そうかもしれませんね。でも、願い事に代償は付きものですから」
欲張ることはしない、と暗に答えると、芦屋さんは眉根を寄せて困った顔をした。
「菜那は頑固だな。でも俺も頑固だから諦めないよ。自分から好きになったのは菜那が初めてなんだ。絶対に振り向かせる」
「芦屋さんの気持ちは嬉しいです。でも私は美人でもなければ可愛くもないし、特にこれと言った特技もないのに、どうしてですか?」
なぜそこまで想ってくれるのか、疑問を投げ掛けると、芦屋さんは七夕の日のことを話し始めた。


