「純白のウェディングドレスなんて、全世界の女子の憧れですよ」
「純白か。菜那は色白だから似合うだろうな」
「どうでしょうか」
似合うかどうかは別にしても現実的じゃない。
「私は結婚するつもりがないので」
そう答えると、芦屋さんは静かに言った。
「体のこと。やっぱり気になる?」
「芦屋さんは結婚したいと思いますか?」
質問に質問で返したことで、芦屋さんの眉間にシワが少しだけ寄ったのが見て取れた。
だから答えをもらう前に、先に自分のことを話す。
「私の病気は一般的に遺伝しません。でも、一部で家族性に認められることがあるんです」
もし結婚して子供を授かったとして遺伝したら、私は自分を責める。
そのことを父も知っているから私が恋愛をしないと言いながら願掛けをしているのを聞いても、反論や反対をしなかった。
「可能性が高い訳じゃないでしょ?」
「でもゼロじゃない。まだ分からないんです。それに傷は気持ちのいいものじゃないし、いつ再発するかも分からないんです。私の体のことで心配と迷惑を掛ける人をこれ以上増やしたくないんです」
父が本当は私に普通の生活をしてもらいたいと望んでいることを私は知っている。
恋愛して、結婚して、子供を授かって、家庭を作る。
私自身も出来る事ならお父さんに花嫁姿見せたいし、孫も抱っこさせてあげたいと思う。
でも現実的には厳しいのだ。
「本当にそれでいいの?」
芦屋さんの問いに、しっかりと頷いて見せた。
もう何度も自問自答してきたこと。
「幸せは恋愛や結婚以外にもありますから」
芦屋さんの気持ちには答えられないということを含めて笑顔で答えると、芦屋さんは口を噤んだ。


