七夕の伝説


でも意外とこういう時は冷静になるものだ。

ここで取り乱したら余計に注目を集めてしまうと頭がきちんと判断し、何事もなかったかのように食事の続きに取りかかり、全て綺麗に食べ終える。


「ご馳走さまでした」


会計を終えた時点で芦屋さんに丁寧にお礼まで伝えて。


「こちらこそ。ご馳走さまでした」


唇に人差し指を当て、妖しく微笑む芦屋さんを見ても無反応。


「ここまで来たんです。まだ時間があるので鶴岡八幡宮でお参りしましょう」


芦屋さんを先導するような形で前を足早に歩く。


「あ、待ってよ。ねえ、もしかして菜那って静かに怒るタイプ?」


後ろから聞こえる声にも淡々とした口調で答える。


「さあ?あまり怒らないので分かりません」

「それなら手繋ごう。人がさらに多くなって来ているからはぐれたら大変だよ」


それなら、ってなに?

危険なのはどっち?

冷静な頭がツッコミを入れる。

でも時間の経過とともに観光客が多くなっているのは確かだ。

振り返り、無心で手をつなぐ。