芦屋さんは制服で来て欲しいと言った。
『制服デート』
青春感漂うキラキラした単語に胸が躍る。
現役の高校三年生である芦屋さんの制服姿を見てみたいと思う。
それになにより私服を考えるよりも制服の方が楽なので、芦屋さんの提案はありがたかった。
ただ、どうしても不安はぬぐい切れない。
もし記者の方に見られたら?
私みたいな普通の女子が芦屋さんの隣にいることを知ってファンはどう思う?
怒る?罵られる?私の移植をしているという素性まで調べ上げられてしまう?
芦屋さんの「大丈夫」という言葉を信じて制服に袖を通したけれど、どうにも二の足を踏んでしまう。
玄関に立つ父の表情もさえない。
それは大事な1人娘が異性と会うから、ではなく、前日に受けた診察の時に詳しい検査が必要だと言われたことからなのだけれど、不安要素がひとつ増えていることに変わりはないのだ。