『デートをしてみたかった』
移植を受ける前にやりたかったこと、という内容の話を七夕の日に話した時に口にした一節だ。
そんな些細なことを覚えていてくれたことに驚き、そしてなんだか胸がこそばゆく感じた。
「俺も気分転換したいから。ね、一緒に出掛けようよ。予定どうかな?」
そう念を押されて聞かれたものだから、卓上のカレンダーに視線を移す。
「えっと、土曜日ですよね?あ。定期検診の日だ」
「そうなの?じゃあ別の日にしようか。次はいつが空いているかな~?」
電話の向こうで予定を調べている様子がしたので、慌てて訂正する。
「検診は前日の金曜日なので。土曜日は大丈夫です。でも、芸能人の方が普通に出かけられるんですか?」
「変装するから大丈夫。ただ……」


