七夕の伝説


「あの、道、間違っているようですが」


不安を感じて言うと、その直後、車が煉瓦造りの建物の前で停車した。


「ちょっと待っていて」

「え?」


越水さんの個人的な用なのだろうか。

聞く間もなく越水さんは出て行ってしまったので、仕方なくそのまま車内で待っていると、10分くらいしてから大きな袋を手にした越水さんが戻ってきた。


「はい。これ」

「私に、ですか?」


頷かれたので受け取り、袋の中身を覗き込む。

でも包装された箱があるだけで内容はよく分からない。


「これ、なんですか?」


シートベルトを着けている越水さんに中身を聞いてみた。


「ケーキよ。バースデーケーキ。芦屋からのプレゼントだって。おめでとう。いくつになったの?」

「16です」


芦屋さんからのプレゼントに驚き、感激しながらも越水さんの質問に答えると、越水さんは車を発進させながら言った。


「16か~。私と一回りも違うのね。いいわね、若くて。今しかできないこと、たくさんあるから目いっぱい青春を謳歌するのよ」

「はい。ちなみに……」


越水さんの高校生活はどんなだったのか聞くと、越水さんは家に着くまで恋愛や勉強、進路や友達との思い出話をたくさんしてくれた。