「あの」
頃合いを見計らい、越水さんに声を掛けると、横目でチラッとこちらを見てくれたので、質問を続ける。
「越水さんは私のような一般人が芦屋さんと関わることを良く思っていないんじゃないんですか?」
「いいえ」
越水さんは短くそれだけ答えると、赤信号で止まった時、私の方を見て続けた。
「芦屋は事務所の稼ぎ頭なの。それなのに最近になって芸能界を引退したいとか言い出して」
「え?そうなんですか?理由は?」
聞くと越水さんは首を横に振った。
「ただ、『如月菜那って子に連絡してくれ。彼女に会わせてくれたらもう少し頑張ってみるから』って言われたのよ。あなた、いったい芦屋の何なの?」
聞かれても質問に答えられるほど、芦屋さんのことは知らないし、私は何者でもない。
だから黙るとそれが答えだと理解してくれた。
「まぁ、いいわ。マネージャーとしては芦屋が働いてくれるならなんでもいいんだから。あなたに会いたいと望むのなら、会うことを止めたりしない。もっとも、如月さんさえ嫌じゃなければ、だけどね」
横目でチラッと見られて、その瞳が私の心の中を読むかのように鋭く、ドキッとした。
反射的に俯く私に、越水さんは言葉を重ねる。


