「すみません、通してください」
芦屋さんの出待ちと思われる若い女性たちに声を掛けながら、駅方面に進む。
「すみません。すみません」
全然前へ進めない人混みに、改めて芦屋さんの人気ぶりを実感し、直接話すことが出来たこと、連絡先を交換したこと、これからも関わっていけるであろうことが夢のように思えてきた。
でも、全て現実。
『雨結構降ってきたみたいだから越水さんに送ってもらえるよう頼んであるから。駅前で待っていて』
つい先ほど、早速、芦屋さんから電話があったのだ。
周りの人たちは、通話先の声は聞こえないはずだから、私が芦屋さんと話しているなんて思いもしないだろう。
それなのに、秘密めいた感じにドキドキしてしまって、口元に手を当て、なるだけ小声で芦屋さんに答えた。
『雨と言ってもそんなにひどくないです』
空を見上げれば、ところどころ雲の切れ目が見えていたから、これ以上強くなることはなさそうだと送迎を断った。
でも芦屋さんは聞く耳を持たず、越水さんがいる場所を一方的に伝え、そのまま通話を終わらせた。
仕方なく、教えられた場所まで足早に歩いて行く。
すると駅前に越水さんの姿が車の前に見えた。
「すみません。お忙しいのに」
駆け寄り、頭を下げた。
「気にしなくていいのよ。今日はもう仕事終わりだし。それより自宅はどこ?」
聞かれて住所を伝えると、越水さんは私を助手席に乗せてから、ナビに登録して車を発進させた。


