七夕の伝説


「恋人はいいんですか?私の存在が邪魔になったりしませんか?」

「恋人?」


芦屋さんはそう言うと、少し考える素振りを見せたあと、「あぁ!」と声を上げた。


「もしかしてモデルの子のこと?ていうか、俺のこと、調べてくれたんだ?嬉しいな」

「いや、そういうんじゃなくて」


墓穴を掘った。

恥ずかしくて俯いてしまう私の前で、芦屋さんは楽しそうな声をあげた。


「菜那は俺に興味なさそうだったから余計に嬉しい」

「だからそうじゃなくて」


口ごもり、あからさまに困っている私を芦屋さんがどんな顔で見ているのか。

きっと口元には笑みが浮かんでいるのだろうと俯きながら想像した。


「菜那。顔上げて」


言われてゆっくりと視線を上げる。

すると芦屋さんは身を屈め、私と視線の高さを合わせて質問の答えをくれた。


「モデルの彼女とはなんでもないよ。ただ向こうが俺を売名に使っているだけ。恋人はいない」


そう言うと唐突に「時は命なり」と言った。


「時は金なり、じゃなくて?」

「うん。俺が作ったの。命はいつ無くなるか分からない。命ある時にやりたいことをやる。思い付いたら即行動。ということで」


芦屋さんは独自の理論を展開してまもなく、スマートフォンを手にして私の前に差し出した。


「連絡先交換しよう」


素早い行動に脱帽。

結局、連絡先を交換することになり、芦屋さんがスタッフの方に呼ばれたのを機に、挨拶もそこそこに、会場を後にした。