七夕の伝説


言葉の内容が解せなくて首を傾げて見ると、芦屋さんは切なく微笑んだ。


「俺は屈折しているから、移植経験のない人に『気持ち分かるよ』とか言われると、『はあ?』って思っちゃうんだ。『この突然湧き上がる不安感は経験しなければ分からない。命の大切さなんて知らないくせに』って思っちゃって、その人のこと、信用ならなくなっちゃう。心配してくれているのも分かっているし、健康なら知らなくて過ごすのが当たり前だってことも理解しているつもりなんだけど。大人げないよな」


芦屋さんは眉根を寄せて切なく微笑んだ。

健康な人を羨む気持ちは当然だし、私だって同じように思うから自分を責めることはないのに。


「幻滅した?」


上目遣いでこちらの様子を伺う芦屋さんに対し、思いっきり首を左右に振って見せる。


「とんでもないです。話してくれて嬉しいですし、不安を抱いていることは、私と同じなんだって知れて、むしろ親近感が湧きました」

「そっか。じゃあ、もっとお近付きになれるように、連絡先交換しようよ。また会って、こうやって話したりしたいから。予定は菜那に合わせるし、芸能人であることで迷惑かけたりしない。約束する。だから」


芦屋さんは小指を私の方に向けた。

約束の指切りげんまん。

でもそれをする前にひとつ。