これにはなんて答えたらいいのか、返答に困る。
ただただ、何も言えず困惑していると、芦屋さんは手を離し、椅子に腰かけなおしてから自身の話を始めた。
「俺さ、移植するまで入院して治療する生活が長かったから、寝て、目覚めなかったらどうしようって不安が今でもあるんだ。本当は薬、使いたくないんだけど、眠れないよりは良いって言われて使っている」
移植後の生活は規則正しいことが第一。
早寝早起き、三食きちんと食べる。
薬の服用も忘れずに、排泄もしっかり。
ただ、いくら気を付けていても完璧には出来っこなくて、眠れない気持ちもよく分かる。
いつ死ぬか分からない恐怖に晒され続けていると不安に対する感覚が麻痺してくると思いきや、生に対する執着の方が強くなり、余計に不安は増すのだ。
それは移植という治療が施された後も続き、再発するかもしれないという不安に駆られ、こんな体じゃなければ親に心配かけることも、なにかを犠牲にすることもないのに、と考えずにいられなくなる。
「芦屋さんの気持ち、分かります」
「うん。ありがとう。菜那の言葉は信じられるよ」


