父と医師の話は自分のことなのに専門的過ぎてなにを話しているのか分からない時が多かったから。
「それと、舞台上で移植医療に関して話す芦屋さんの真剣な姿は眩しいくらい真っ直ぐで、胸を打つものでした」
来客の半分以上が芦屋さんのファンだということもあってか、芦屋さんの話の内容は専門的なものではなく、関心を寄せて欲しい、苦しんでいる人がいる現実を知って欲しい、可能なら力になって欲しい、という切実な願いだった。
「献血への協力を訴えていたことも驚きましたが、それ以上に羨ましいと思いました」
「羨ましい?」
反復されて、頷く。
「芦屋さんは人の心と体を動かせる。それが羨ましいんです。私にも出来ることがあればいいのにって思わされました」
正直に話すと、芦屋さんはなにかを思い付いたかのように手をパンっと打った。
その音に驚いて芦屋さんを見ると、芦屋さんは私に近づき、それからしゃがみ込んで、膝の上でペットボトルを握っている私の手を包み込み、言った。
「菜那に出来ること、あるよ」
「なんですか?」
講演の手伝い、とかだったら私では分不相応で断ろう。
そう瞬間的に頭で考えたけど、話は違った。
「友達になって欲しいんだ。俺、同じ境遇の友達
が欲しくて」
それはつまり、言い換えると……
「同じ境遇の方なら誰でもいいんじゃないんですか?」
「ん?あぁ、ハハ。そうだね。そうとも言える。でも菜那は多分、ほかの人とは違うってここが、感じているんだ」
芦屋さんは手術痕のあるであろう胸元を押さえて続けた。
「菜那は長年一緒にいるマネージャーすら気付かなかったのに、俺の体調が悪いことに気付いてくれて、気遣って心配までしてくれた。本当は講演会だけ参加して帰りたかったはずなのに、俺の体調が気になって楽屋まで来てくれたんだろ?」
見抜かれていたことに驚きつつ、恥ずかしくて俯くも、芦屋さんは話を続ける。
「それと、七夕の日。俺、菜那の肩で寝ちゃったよね?俺、睡眠障害があるから薬なしでは寝られないのにあの日は眠れた。そのくらい、安心するんだよ。菜那の存在が」


